私が、尚巴志(しょうはし)という人物を知ったのは三年ほど前の事です。それまで、私はその存在すら知りませんでした。
「沖縄二高女看護隊・チーコの青春」を書くとき、沖縄の昭和史は調べましたが、それ以前の事は何も知りませんでした。何年か経って、琉球の歴史を調べて、尚巴志と出会いました。
まず、思ったのは変わった名前だという事です。領主の事を按司(あじ)といい、城の事をグスクといい、ノロと呼ばれる卑弥呼のような女性もいて、面白い世界だと思いました。尚巴志は小さなグスクの按司から出発して、琉球を統一します。まさに、琉球の英雄です。しかし、色々と調べて見ましたが、詳しい事はよくわかりませんでした。それでも、何か惹かれるものを感じて、小説を書こうと思い立ちました。
琉球王国関連の本を読みあさってみましたが、当時の時代背景がよくわからず、イメージが浮かんで来ませんでした。
時代の流れを把握するために、琉球と日本と中国と朝鮮の比較年表を作ってみました。
日本の戦国時代の事は、今までに何作か書いていますので、ある程度、わかりますが、その百年前の南北朝時代の事は調べなければわかりませんでした。さらに、元や明、高麗や朝鮮の事も調べて、何とか、イメージが浮かぶようになってきました。
資料を調べたお陰で、懐良親王(征西将軍宮)、朱元璋(洪武帝)、朱棣(永楽帝)、李成桂(初代朝鮮国王)という魅力的な人物に出会えました。
次に主要登場人物の略歴を作りました。それぞれの人物像がはっきりすると、登場人物たちは勝手に動き始めます。
思っていたよりも長い時間が掛かり、思っていたよりも長い物語になりましたが、何とか、完成する事ができました。
いつも、小説を書いている時に感じる事ですが、何か目に見えない不思議な力によって書かされていると感じます。今回の小説は、その事を強く感じました。書いているうちに、今まで思ってもいなかった展開になっていく事が何度もありました。
目に見えない不思議な力に感謝いたします。
