江戸時代の日新館の座敷の様子を描いたもので、芸者風の女性が八人、水汲みの女性が一人、若旦那風の男が一人、風呂上りにくつろいでいます。煙草盆と水桶に「湯安」と書いてあり、当時、湯本安兵衛と名乗っていた日新館の室内だとわかります。作者は喜多川月麿です。
その絵を初めて見た時、月麿とは何者なのか、私は知りませんでした。喜多川という姓と麿が付く事から、あの有名な歌麿の弟子なのかもしれないと思いました。女性の顔立ちも歌麿の描く美人に似ています。
調べてみたら、やはり、歌麿の弟子でした。初めの頃は菊麿と名乗っていて、途中から月麿に改名しています。黄表紙の挿絵も描いていて、弥次さん北さんで有名な十返舎一九の「東海道中膝栗毛」の挿絵も描いていました。
十返舎一九が草津温泉に来たというのは知っていました。もしかしたら、一九と一緒に月麿も草津温泉に来て、当時の日新館に泊まったのかもしれないと思いました。
これは小説になるとピンと来ました。江戸時代の草津温泉を舞台に、一九と月麿の珍道中を一九が書いた滑稽本のように書いたら面白い作品ができると思いました。
当時の草津温泉の様子や江戸の様子、活躍していた戯作者や浮世絵師を調べ、謎解きの要素も加えて、完成したのが「草津温泉膝栗毛・冗談しっこなし」です。当時の草津温泉をできるだけ再現してみたつもりです。読んでみて下さい。
喜多川月麿の略歴




ラベル:浮世絵師