2023年09月28日

尚巴志伝 あらすじと解説 第一部 4.島添大里グスク

9歳になったサハチ(尚巴志)は友達と海に潜って遊んでいます。
馬天浜の西にある島添大里(しましいうふざとぅ)グスクで家督争いの戦が始まり、サハチは母と一緒に祖父のサミガー大主の屋敷に避難します。
祖父の屋敷には浜の者たちが全員、避難して来て、ウミンチュたちは武器を持って守りを固めます。
四日後、ようやく戦も終わり、避難していた人たちも解放されます。サハチは友達と一緒に海に行きますが、そこで、無残な姿で死んでいるサムレーの死体を見て唖然なります。

島添大里グスクは馬天浜を見下ろす山の上にあり、古くからヤマトゥとの交易をしていて栄えていました。
島添とは島々を治めるという意味で、浦々を治めるという意味の浦添(うらしい)よりも古いと思われます。
伝説では琉球に来た源為朝(みなもとのためとも)と島添大里按司の娘との間に舜天(しゅんてぃん)が生まれたと言われています。舜天は浦添にグスクを築いて、浦添按司になります。

家督争いが起きる百年ほど前、島添大里按司に対抗していた玉グスク按司は、良港に恵まれた島添大里グスクを奪い取ろうと考え、糸数(いちかじ)グスクと大(うふ)グスクを築いて、息子たちに守らせます。しかし、難攻不落の島添大里グスクを落とす事はできませんでした。
七十年ほど前に浦添按司(英慈)が亡くなり、家督争いの末、玉グスクに婿養子に入っていた玉城(たまぐすく)が浦添按司になります。浦添が手に入ったからには島添大里按司と争う必要もなくなり、玉グスク按司は島添大里按司と同盟を結びます。
三十年前、玉城の息子の西威(せいい)が浦添按司の時、察度(さとぅ)によって滅ぼされます。察度は島添大里グスクも玉グスクも攻めます。共にグスクを奪われる事はなかったが、島添大里按司は戦死してしまいます。島添大里按司には跡継ぎがなく、玉グスク按司の次男を婿に迎えて跡を継がせます。
その島添大里按司が亡くなったのが先月の事で、家督を巡って、子供たちが争いを始めたのでした。

島添大里按司の正妻が産んだ次男と側室が産んだ長男との争いでした。正妻は戦死した島添大里按司の娘で、側室は糸数按司の娘でした。
その家督争いに、島添大里グスクを奪い取ろうと虎視眈々と狙っていた八重瀬按司(えーじあじ)が介入してきて、島添大里グスクを奪い取ってしまったのでした。


登場人物

・サハチ(尚巴志)
サミガー大主の孫。父は苗代大親(サグルー)。

・サンラー
ウミンチュの倅。後に意外な場所で、サハチと再会します。

・ヤタルー
鮫皮職人の倅。

・マシュー
サハチの妹。後に佐敷ヌルになる。

・尚巴志の母、ミチ
美里之子(んざとぅぬしぃ)の長女。
サハチを産んだあと、妹のマシュー、弟のマサンルー、弟のヤグルー、妹のマナミーを産んでいる。

・馬天ヌル(馬天ノロ)
サハチの叔母、マカマドゥ。サグルーの妹。

・キラマ
鮫皮になるエイを捕る名人。慶良間島出身なので、キラマと呼ばれている。

・ヤシルー
ヤマトゥから来た弓矢の名人。

・尚巴志の父、サグルー
サミガー大主の長男。後の中山王、思紹。


・八重瀬按司(えーじあじ)
島尻大里按司(しまじりうふざとぅあじ)の叔父。後に王叔汪英紫(おうしゅくおーえーじ)として、明国に朝貢する。
十年前に八重瀬グスクを攻め取り、八重瀬按司になる。その時の活躍が察度の耳に入り、察度の跡継ぎ、フニムイ(武寧)の嫁に八重瀬按司の娘を所望される。


尚巴志伝
ラベル:尚巴志伝 琉球