2017年06月26日

尚巴志伝 あらすじと解説 第一部 77.浦添グスク炎上

サハチ(尚巴志)が首里グスクを奪い取った日の夕方、浦添の遊女屋『喜羅摩』では、早々と戦勝祝いの宴が賑やかに開かれていました。
招待したのは侍女の頭を務めるナーサで、招待されたのは中山王の重臣たちでした。
重臣といっても武将ではなく、政務を司つかさどっている文官たちです。
夜も更けて、重臣たちがだらしなく遊女と戯れている時、若いサムレーが血相を変えてやって来ました。
「大変です。グスクが燃えております」と若いサムレーは叫びました。
重臣たちが外に飛び出して、グスクを見ると真っ赤な炎を上げて、グスクは勢いよく燃えていました。

ウニタキは配下を率いて、日が暮れるのを待って、浦添グスク内に潜入しました。
中山王の武寧も若按司もいないので、気が緩んでいる警固の兵たちを倒しながら、ウニタキたちはあちこちに火を付けました。
グスク内の者たちは火を消すどころではなく、必死に逃げました。
ウニタキたちは御内原(うーちばる)に潜入して、武寧の息子たちを皆、殺して、女たちは速く逃げろと追い出しました。
若按司の側室になっていたヒューガの娘のユリと奥間から贈られた側室を助け、武寧の三男に嫁いでいた玉グスク按司の娘も助けました。
西門からは財宝を山積みにした荷車が首里へと運ばれて行きました。

その頃、浮島の久米村ではファイチに率いられた慶良間の若者たちが、アランポーの配下の者たちを殺し、一族の者も殺し、アランポーも殺していました。

夜が明け、浦添グスクはまだくすぶっていましたが、グスク内に建っていたほとんどの屋敷が焼け落ちていました。
朝早くから重臣たちのもとへ、ナーサからの書状が届いて、重臣たちは昨夜の遊女屋に集まります。
ナーサは、中山王の武寧は亡くなり、島添大里按司が新しい中山王になると言います。
重臣たちは驚きますが、ナーサの話を聞いて、新しい中山王に仕える事になります。

山南王のシタルーがいる島尻大里グスクは、中山王の若按司が率いる兵とタブチが率いる兵に完全に包囲されていました。
中山王の若按司、カニムイのもとに、浦添グスクが焼け落ちたとの知らせが入ってきます。
タブチのもとにも浦添グスク炎上の知らせが入ります。
カニムイもタブチも、一体、何が起こっているのか、わけがわかりませんでした。


登場人物

・ナーサ
汪英紫が八重瀬グスクを攻め落とす時に、八重瀬按司に贈った絶世の美女。
浦添の若按司に嫁いだ汪英紫の長女、ウシの侍女として浦添グスクに入り、今では侍女たちを束ねている。
ウニタキの亡くなった妻、ウニョンの実の母親。
侍女を引退して、「遊女屋」をやろうと考えている。
尚巴志のために、中山王の重臣たちを寝返らせる。

・安謝大親
中山王の重臣。交易担当の総奉行。

・嘉数大親
中山王の重臣。財政担当。

・ウニタキ
先代勝連按司の三男。先代の中山王、察度の孫娘(武寧の娘)、ウニョンを妻に迎える。
今帰仁合戦で、勝連の水軍大将として活躍する。
浜川大親となりヤマトゥとの交易を担当する。
望月党に妻子を殺され、佐敷に逃げてくる。
尚巴志のために裏の組織「三星党」を結成する。
尚巴志の叔母、チルーを妻に迎える。
久高島のフカマヌルと結ばれ、娘が生まれる。
望月党を壊滅させ、妻と娘の敵を討つ。
首里グスクの抜け穴を利用して、グスク内に潜入して、尚巴志の兵をグスク内に入れる。
浦添グスクに潜入して、火を付けて炎上させる。

・ユリ
奥間で生まれたヒューガの娘。
中山王の若按司の側室になる。
燃える浦添グスクからウニタキに助けられる。

・ファイチ(懐機)
明国から逃げて来た道士。
家族を佐敷に連れて来て、尚巴志のために活躍する。
久米村を仕切っているアランポーを倒すため、風水師として久米村に住む。
浦添グスクの炎上と同時に、アランポーの一族を抹殺する。

・アランポー(亜蘭匏)
久米村の唐人。
1383年、泰期に代わって正使となり、明国に行く。
1394年、国相に任じられる。
久米村を仕切っている。

・ワンマオ(王茂)
久米村の唐人。
アランポーを追い出すためにファイチと手を組む。
アランポーを倒して、久米村の代表になる。

・山南王、汪応祖
シタルー。汪英紫の次男。島尻大里按司。
山南王の官生として明国に留学する。
兄タブチとの争いに勝ち山南王になる。
首里グスクを奪い取るつもりだったが、尚巴志に奪われる。

・カニムイ
中山王武寧の若按司。
中山王の大将として、中部の按司たちを率いて、山南王の島尻大里グスクを攻める。

・奥間大親
中山王の重臣。

・ハマジ
奥間大親の配下。

・タブチ
八重瀬按司
汪英紫の長男、シタルーの兄。
中山王の武寧と組んで、シタルーを倒すつもりだったが、尚巴志に邪魔される。



尚巴志伝
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2017年06月19日

尚巴志伝 あらすじと解説 第一部 76.首里のマジムン

1406年2月9日、島添大里グスクで、馬天ヌル、佐敷ヌル、フカマヌルによって、出陣の儀式が行なわれました。
儀式が終わるとサハチ(尚巴志)の弟、マサンルーが100人の兵を率いて、糸数グスクに向かいました。

サハチと父、大将に任命された重臣たちは運玉森に移動しました。
運玉森には慶良間の島から来た1000人の兵が待機していました。
サハチと父は「マジムン屋敷」で鎧を身に付けて、1000人の兵の前に立ちました。
皆、「三つ巴」の紋が描かれた鎧を着ていて、引き締まった顔付きで並んでいます。
父が挨拶をして、サハチも挨拶をしました。
兵たちの歓声が轟いている中、四人の女武者が現れました。
馬天ヌルと佐敷ヌルとフカマヌルとマチルギが鎧を身に付けてやって来たのです。
サハチが驚いて、どうして来たのか聞くと、馬天ヌルは、首里グスクにマジムン(悪霊)がいるので退治しなければならないと言います。
マジムンを退治するには四人のヌルが必要なので、神人(かみんちゅ)であるマチルギも連れて来たと言います。
父は、首里にマジムンがいるなら退治しなければならんと言い、サハチも、戦には参加しないという条件を付けて、四人の同行を許しました。

ウニタキがやって来て、中山王の若按司が中部の兵700人を率いて出陣したと知らせます。
中山王の武寧は浦添で若按司を見送ると首里グスクに戻ったようです。
しばらくして、ヤキチが現れ、東方の按司たちが豊見グスク攻めに向かったと知らせます。
ウニタキが抜け穴を通って、首里グスクに潜入すると言って出掛けました。

それから二時間ほどして、中山王の兵がタブチの兵と合流して、島尻大里グスクを包囲したとヤキチの配下の者が知らせました。
サハチ、クマヌ、兼久大親の三人がそれぞれ100人の兵を率いて首里に向かいました。

サハチたちが首里グスクに着くと土砂降りでした。
やがて、正門が開いて、ウニタキが合図をしました。
サハチは兵を突撃させました。
兼久大親の兵は敵兵を倒して、グスクの警固に付き、サハチの兵は石垣の内側に沿って進んで敵を倒し、クマヌの兵は武寧のいる御内原を攻めます。

サハチはヌルたちと一緒に最後にグスクに入りました。
グスク内には見事な宮殿が建っていました。
サハチとマチルギが宮殿に見とれていると、馬天ヌルがマチルギを呼びました。
マチルギは馬天ヌルたちと一緒に、ウタキのある「キーヌウチ(後の京の内)」に入って行きました。

武寧はすでに殺されていました。
シタルーの命令で、武寧の側室になったアミーという女が殺したのでした。
アミーはサハチたちが攻めて来たのを、シタルーが攻めて来たものと勘違いして、武寧を殺したのでした。
クマヌがアミーを連れて、サハチの所に来て、成り行きを説明しました。
武寧を討ったのだから敵ではない。シタルーに返してやろうとサハチは言いました。

戦が終わると、ウニタキは次の仕事があると言って、浦添に向かいました。
サハチが兵たちの前で、首里グスクを奪い取ったぞと言うと、皆は勝ち鬨を上げて喜びました。

突然、暗くなったかと思うと雨が勢いよく降って来ました。
風も強くなり、稲光もして、雷も鳴り出しました。
空から大きな雹が降って来て、庭一面を埋め尽くしました。
やがて、黒い雲が飛んでいって、雨がやんで日が差して来ました。
四人のヌルたちがやって来て、空を指さしました。
サハチが指さす方を見ると、大きな虹が出ていました。
宮殿を囲んで、虹が輝いていました。



登場人物

・サハチ(尚巴志)
島添大里按司。
父はサグルー(東行法師)、母は先代の美里之子の娘。
祖父はサミガー大主、祖母は先々代の大グスク按司の娘。
首里グスクを攻め落とす。

・マチルギ
尚巴志の妻。
伊波按司の次女。娘たちの剣術の師匠。
サスカサからムムトゥフミアガイ(百度踏揚)という神名を授かる。
馬天ヌルと一緒に、首里のマジムンを退治する。

・馬天ヌル(馬天ノロ)
尚巴志の叔母。神名はティーダシル。
ヒューガと結ばれ、娘のササが生まれる。
首里のマジムンを退治する。

・佐敷ヌル(佐敷ノロ)
尚巴志の妹、マシュー。神名はツキシル。
師範代として娘たちに剣術を教えている。
佐敷から島添大里に移る。
シンゴと結ばれ、娘のマユが生まれる。
馬天ヌルと一緒に、首里のマジムンを退治する。

・フカマヌル(外間ノロ)
久高島のフカマヌルの娘でフカマヌルを継ぐ。
父はサグルー。尚巴志の母違いの妹。
ウニタキと結ばれ、娘のウニチルが生まれる。
馬天ヌルと一緒に、首里のマジムンを退治する。

・ササ
馬天若ヌル。
馬天ヌルとヒューガの娘。

・ミチ
尚巴志の長女。
ヌルになるために修行中。

・マサンルー
尚巴志の弟。
佐敷グスクを任され、佐敷大親を名乗る。
サハチの代理として、豊見グスク攻めに参加する。

・屋比久大親
平田大親の重臣になる。
副将としてマサンルーに従う。

・東行法師
尚巴志の父、サグルー。
佐敷按司をサハチに譲り、東行法師を名乗って旅に出る。
慶良間の無人島で若い者たちを鍛え、『師匠』と呼ばれる。
首里攻めの総大将として指揮を執る。

・クマヌ
ヤマトゥの山伏。熊野大親。
尚巴志の家臣でサムレー大将。
首里攻めの大将を務める。

・マウー
伊是名のナビーの五男。サグルーの甥。慶良間の島の師範代。
クマヌ隊の副将を務める。

・ヒューガ
三好日向。武芸者。尚巴志の師匠。
尚巴志のために山賊になる。
山南王の船を奪い取って海賊になり、慶良間の島の修行者たちの食糧を調達する。
首里攻めのために慶良間の島から1000人の兵を運ぶ。

・サム
伊波按司の四男。マチルギの兄。
妻はクマヌの娘のマチルー。
伊波を飛び出し、妻を連れて佐敷に来る。
父親の死後、伊波大親を名乗り、尚巴志の重臣になる。

・兼久大親
島添大里按司の重臣。
首里攻めの大将を務める。

・苗代大親
尚巴志の叔父。サハチとマチルギの剣術の師匠。
島添大里按司の重臣。島添大里の武術師範になる。

・美里之子(んざとぅぬしぃ)
尚巴志の叔父。武術師範。
島添大里大親の重臣。

・當山之子
島添大里按司の重臣。美里之子の弟。

・ヤグルー
尚巴志の弟。
平田グスクを任され、平田大親を名乗る。

・マガーチ
尚巴志の従弟。苗代大親の長男。

・与那嶺大親
島添大里按司の重臣。
首里攻めで、小荷駄奉行を務める。

・マタルー
尚巴志の弟。
島添大里グスクを守る。

・サグルー
尚巴志の長男。
島添大里グスクを守る。

・チルー
ウニタキの妻。美里之子の妹。
マチルギに代わり、女子サムレーを指揮して島添大里グスクを守る。

・八代大親
ヤシルー。ヤマトゥから来た弓矢の名人。
島添大里按司の重臣。
島添大里グスクを守る。

・クルー
尚巴志の弟。
佐敷グスクを守る。

・サンルー
美里之子の長男。
佐敷グスクを守る。

・クグルー
泰期の三男。母は後妻のナミー。
妻は苗代大親の娘。
平田グスクを守る。

・ウニタキ
先代勝連按司の三男。先代の中山王、察度の孫娘(武寧の娘)、ウニョンを妻に迎える。
今帰仁合戦で、勝連の水軍大将として活躍する。
浜川大親となりヤマトゥとの交易を担当する。
望月党に妻子を殺され、佐敷に逃げてくる。
尚巴志のために裏の組織「三星党」を結成する。
尚巴志の叔母、チルーを妻に迎える。
久高島のフカマヌルと結ばれ、娘が生まれる。
望月党を壊滅させ、妻と娘の敵を討つ。
首里グスクの抜け穴を利用して、グスク内に潜入して、サハチの兵をグスク内に入れる。

・ヤキチ
奥間の鍛冶屋。サハチを守るために佐敷に送られる。
奥間大親。
配下の者を各地に配置して、敵の動きを探る。

・中山王、武寧
フニムイ。察度の長男。浦添按司。
妻は汪英紫の娘ウシで、タブチとシタルーの義兄。
山北王、攀安知の義父。
山南王のシタルーと一緒に首里にグスクを築く。
首里グスク完成後、タブチと組んで、シタルーを倒そうとたくらむ。

・アミー
武寧の側室。
シタルーが送った刺客。



尚巴志伝
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2017年06月12日

尚巴志伝 あらすじと解説 第一部 75.首里グスク完成

首里グスクの完成の儀式が行なわれる2月10日の翌日、山南王のシタルーを攻めるとの出撃要請が、八重瀬按司のタブチからサハチ(尚巴志)のもとに来ました。
サハチは大グスク按司と一緒に玉グスクに行って、東方(あがりかた)の按司たちと相談します。
玉グスク按司のもとには中山王の武寧から使者が来て、中山王もタブチを支援するので、東方の按司たちもタブチを支持するようにと言って来たそうです。
東方の按司たちは戦の準備をして、2月の11日の朝、糸数グスクに集合する事に決まりました。

島添大里に帰ったサハチは、城下の「まるずや」に行きます。
「まるずや」には父とクマヌとウニタキとヤキチが待っていました。
サハチたちは、首里グスクを奪い取るための作戦を検討して、父とクマヌは決戦が行なわれるであろう首里グスクの南部の地形を調べに行きました。
ヤキチは奥間のサタルーを今回の戦に参加させるように頼み、了解を得ます。

2月5日、サハチはウニタキと会い、首里グスクは完成したが、引き続き、重臣たちの屋敷の普請が始まった事を知ります。
普請に従事している人足たちと、人足を指図している役人もいるので、そいつらはウニタキが始末すると言いました。
そして、ウニタキは、武寧がお気に入りの側室と数人の家臣を連れて、首里グスクに移ったと言います。
武寧が首里グスクに移ったのなら、首里グスクを攻め落とした時、武寧の命も奪おうとサハチは考えます。

次の日の夕方、タブチの密使が来て、11日の出陣が9日になったと知らせました。
密使もその理由を知らず、出撃の日にちがシタルーに漏れたのかもしれないとサハチたちは思いました。

2月8日の午後、サハチが父と一緒に「まるずや」に行くと、ヒューガとファイチがいました。
ヒューガは慶良間の兵たちの移動を終え、ファイチも久米村のアランポー退治の準備は整ったと言います。


登場人物

・サハチ(尚巴志)
島添大里按司。
父はサグルー(東行法師)、母は先代の美里之子の娘。
祖父はサミガー大主、祖母は先々代の大グスク按司の娘。

・大グスク按司
マナビー(大グスクヌル)の弟。
父が戦死したあと、母と共に小禄のはずれに隠れ住んでいた。
尚巴志から大グスクを譲られ、大グスク按司になる。

・玉グスク按司
南部東方の按司。若按司の妻は尚巴志の妹。

・知念按司
南部東方の按司。若按司の妻は尚巴志の妹。
大グスク按司の叔父。

・垣花按司
南部東方の按司。
大グスク按司の叔父。

・糸数按司
先代の糸数按司の母親違いの弟。
察度に仕えて護衛隊長を務め、上間按司になる。
兄の糸数按司を倒して、糸数按司になる。

・東行法師
尚巴志の父、サグルー。
佐敷按司をサハチに譲り、東行法師を名乗って旅に出る。
慶良間の無人島で若い者たちを鍛え、『師匠』と呼ばれる。

・クマヌ
ヤマトゥの山伏。熊野大親。
尚巴志の家臣でサムレー大将。

・ウニタキ
先代勝連按司の三男。先代の中山王、察度の孫娘(武寧の娘)、ウニョンを妻に迎える。
今帰仁合戦で、勝連の水軍大将として活躍する。
浜川大親となりヤマトゥとの交易を担当する。
望月党に妻子を殺され、佐敷に逃げてくる。
尚巴志のために裏の組織「三星党」を結成する。
尚巴志の叔母、チルーを妻に迎える。
久高島のフカマヌルと結ばれ、娘が生まれる。
望月党を壊滅させ、妻と娘の敵を討つ。

・ヤキチ
奥間の鍛冶屋。サハチを守るために佐敷に送られる。
奥間大親。

・サタルー
サハチの息子。母親は一夜妻だったフジ。
奥間の長老に育てられ、「若様」と呼ばれる。

・マサンルー
尚巴志の弟。
佐敷グスクを任され、佐敷大親を名乗る。

・ナツ
ウニタキの配下。
島添大里グスクの侍女。
密かにサハチを思っている。

・ヒューガ
三好日向。武芸者。尚巴志の師匠。
尚巴志のために山賊になる。
山南王の船を奪い取って海賊になり、慶良間の島の修行者たちの食糧を調達する。

・ファイチ(懐機)
明国から逃げて来た道士。
家族を佐敷に連れて来て、尚巴志のために活躍する。
久米村を仕切っているアランポーを倒すため、風水師として久米村に住む。



尚巴志伝
ラベル:琉球 尚巴志伝

2017年06月05日

尚巴志伝 あらすじと解説 第一部 74.タブチの野望とシタルーの誤算

久し振りに馬天ヌルと娘のササと一緒に、年末年始を過ごしたヒューガは五日になると慶良間の島から兵の移動を開始します。
サハチ(尚巴志)の父は慶良間の島には帰らず、孫たちと過ごしていました。

正月の半ば、八重瀬グスクで婚礼があり、南部の按司たちは皆、集まりました。
八重瀬按司のタブチの娘が中山王の武寧の四男に嫁いで行きました。
山南王のシタルーも来ていました。
糸数按司は何を考えているのかわかせない男でした。
武寧の次男の兼グスク按司は落ち着きのない男でした。
小禄按司は不気味で、面影が父親の宇座の御隠居(泰期)に似ていて、シタルーに付くのかタブチに付くのかわかりませんでした。

お祝いの宴の時、サハチはタブチに呼ばれて、別室でタブチと二人だけで会いました。
中山王が味方に付いたので、今回は必ず、シタルーに勝つから、サハチも従えとタブチは言います。
サハチは驚いた振りをして、タブチに従うと約束します。

次の日、サハチは「まるずや」でウニタキと会い、首里グスクの完成の儀式が2月10日に行なわれる事を知ります。
ウニタキは周りの状況を説明したあと、首里グスクの抜け穴を見つけたと言います。
シタルーが首里グスクを奪い取るために造った抜け穴を、ウニタキが見つけ出したのでした。

「まるずや」から出たサハチは弟のヤグルーと久高島のフカマヌルが一緒にいるのに出会います。
年末年始に誰も帰って来なかったので、フカマヌルは心配して島を出て来たそうです。
サハチは二人を連れて「まるずや」に戻り、フカマヌルをウニタキに預けます。

正月23日、シンゴとクルシの船が馬天浜に来て、サハチの長男、サグルーと弟のマサンルーが無事にヤマトゥから帰って来ました。
二人は京都まで行って来たと言って、サハチを驚かせます。
「一文字屋」が京都にも店を出して、その店にお世話になって京都見物を楽しんだと言います。
二人の話を聞いて、サハチも京都に行きたいと思いました。
シンゴからは、シンゴの父親、三郎左衛門が亡くなったと聞いて驚きます。
サハチはヤマトゥ旅に行った時の事を思い出し、三郎左衛門の冥福を祈りました。



登場人物

・サハチ(尚巴志)
島添大里按司。
父はサグルー(東行法師)、母は先代の美里之子の娘。
祖父はサミガー大主、祖母は先々代の大グスク按司の娘。

・ヒューガ
三好日向。武芸者。尚巴志の師匠。
尚巴志のために山賊になる。
山南王の船を奪い取って海賊になり、慶良間の島の修行者たちの食糧を調達する。

・馬天ヌル(馬天ノロ)
尚巴志の叔母。神名はティーダシル。
ヒューガと結ばれ、娘のササが生まれる。

・ササ
馬天若ヌル。
馬天ヌルとヒューガの娘。

・佐敷ヌル(佐敷ノロ)
尚巴志の妹、マシュー。神名はツキシル。
師範代として娘たちに剣術を教えている。
佐敷から島添大里に移る。
シンゴと結ばれ、娘のマユが生まれる。

・東行法師
尚巴志の父、サグルー。
佐敷按司をサハチに譲り、東行法師を名乗って旅に出る。
慶良間の無人島で若い者たちを鍛え、『師匠』と呼ばれる。

・タブチ
八重瀬按司
汪英紫の長男、シタルーの兄。

・山南王、汪応祖
シタルー。汪英紫の次男。島尻大里按司。
山南王の官生として明国に留学する。
兄タブチとの争いに勝ち山南王になる。

・糸数按司
先代の糸数按司の母親違いの弟。
察度に仕えて護衛隊長を務め、上間按司になる。
兄の糸数按司を倒して、糸数按司になる。

・ンマムイ
兼グスク按司。
武寧の次男。山北王の娘、マハニを妻に迎える。

・小禄按司
武寧の従兄。
宇座の御隠居、泰期の長男。

・ウニタキ
先代勝連按司の三男。先代の中山王、察度の孫娘(武寧の娘)、ウニョンを妻に迎える。
今帰仁合戦で、勝連の水軍大将として活躍する。
浜川大親となりヤマトゥとの交易を担当する。
望月党に妻子を殺され、佐敷に逃げてくる。
尚巴志のために裏の組織「三星党」を結成する。
尚巴志の叔母、チルーを妻に迎える。
久高島のフカマヌルと結ばれ、娘が生まれる。
望月党を壊滅させ、妻と娘の敵を討つ。

・ヤグルー
尚巴志の弟。
平田グスクを任され、平田大親を名乗る。

・フカマヌル(外間ノロ)
久高島のフカマヌルの娘でフカマヌルを継ぐ。
父はサグルー。尚巴志の母違いの妹。
ウニタキと結ばれ、娘のウニチルが生まれる。

・シンゴ
早田新五郎。サイムンタルーの弟。
兄の左衛門太郎が朝鮮に投降したため、お屋形様の代理を務める。
佐敷ヌルと結ばれ、娘が生まれる。

・クルシ
早田左衛門太郎の重臣。
倅に跡を譲って隠居し、尚巴志の家臣になる。

・サグルー
尚巴志の長男。

・マサンルー
尚巴志の弟。
佐敷グスクを任され、佐敷大親を名乗る。



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