2025年03月07日

尚巴志伝 あらすじと解説 第一部 19.マチルギ

サハチ(尚巴志)が対馬でイトと仲よくやっていた頃、マチルギは勝連按司の息子からお嫁にほしいと言われます。
敵討ちの事しか考えていないマチルギは断りましたが、いい縁談だと父親に説得されます。
マチルギは仕方なく、もし相手が自分よりも強かったらお嫁に行くと言います。
断ってくるだろうと思っていたのに、相手は伊波にやって来ます。
勝連按司の三男でウニタキと名乗った相手とマチルギは試合をしますが負けてしまいます。
マチルギは二か月後にもう一度試合をしたいと頼み、ウニタキは承諾してくれました。
ウニタキに勝つには今まで通りの稽古をしていても駄目だとマチルギは思い、佐敷に行こうと決心します。
佐敷には武術道場があって、サハチよりも強い人がいるとサハチから聞いていました。
兄たちと一緒に佐敷に行ったマチルギは、山伏のクマヌを頼ります。
クマヌのお陰で、マチルギは武術道場に入って剣術の修行に励みます。
すぐ上の兄のサムがマチルギと一緒に佐敷に残りました。
マチルギの事はすぐに噂になります。
十五歳の娘なのに滅法強い。クマヌがサハチのお嫁さんを探していた事を知っている者たちは、あの娘はサハチのお嫁さんに違いないと噂をします。
その噂はサハチの父親、佐敷按司の耳にも入って、クマヌとマチルギを呼んで、わけを聴きます。
今度負けたら勝連按司の息子の嫁になると聞いた佐敷按司は思わず、「勝ってくれ」と言い、弟の苗代之子(なーしるぬしぃ)にマチルギの指導を任せます。
二か月後、マチルギはウニタキと試合をして、引き分けます。今度はウニタキが二か月後にもう一度試合をしたいと頼み、マチルギはうなづきます。

ウニタキは架空の人物です。マチルギをめぐってのサハチの恋敵として登場させたのですが、このあとの話の展開によって、重要な人物となっていきます。


登場人物

・マチルギ
伊波按司の次女。後に尚巴志の妻になる。

・伊波按司
先代の今帰仁按司の次男。

・サム
伊波按司の四男。後に尚巴志の家臣になる。

・ウニタキ
勝連按司の三男。勝連に来たマチルギを見初めて嫁に請う。

・クマヌ
ヤマトゥの山伏。佐敷按司の家臣。

・マチルー
クマヌの娘。

・佐敷按司
尚巴志の父。

・苗代之子(なーしるぬしぃ)
尚巴志の叔父、佐敷按司の弟。剣術の名人。


尚巴志伝
ラベル:尚巴志伝 琉球

2025年01月11日

尚巴志伝 あらすじと解説 第一部 18.富山浦

サハチ(尚巴志)とイトが仲よくなった事を快く思わない男たちがいました。
その男はサハチに決闘を申し込みますがサハチに負け、諦めるかと思われましたが諦めずに、さらに決闘を申し込んできます。
サハチは決闘の事は誰にも言いませんでしたが、サイムンタルーに知られ、サイムンタルーはサハチとヒューガを高麗(朝鮮半島)に連れて行きます。
朝鮮の富山浦(プサンポ)にはサイムンタルーの叔父の早田五郎左衛門がいました。
五郎左衛門は高麗人の娘を妻に迎え、「津島屋」という店を出している商人でした。
サハチは五郎左衛門から高麗の話を聞きます。
サハチの祖父、サミガー大主の作業場には高麗の人たちも働いていましたが、サハチは高麗に興味を持った事はありませんでした。
突然、高麗に連れて来られたサハチは高麗と対馬の関係などを学びます。
サイムンタルーは対馬に帰り、言葉も通じない高麗に置いていかれ、イトにも会えずサハチはがっかりしますが、サイムンタルーがまたやって来て、対馬に帰る事になりました。
土寄浦ではなく、浅海湾の奥にある和田浦という所に連れて行かれました。
和田浦は早田氏の第二の拠点で、サイムンタルーの叔父の兵衛左衛門が守っていましたが、兵衛左衛門はサンルーザと一緒に明国に行っていて留守でした。
サハチとヒューガはサイムンタルーに案内されて、これから暮らす事になる空き家に行きますが、そこには何と、イトとサワが待っていました。


登場人物

・サハチ(尚巴志)
サミガー大主の孫。父は佐敷按司(サグルー)。

・ヒューガ
三好日向。武芸者。
サハチにとって重要な人物となる。
「陰の流れ 第一部」に智羅天として登場。愛洲移香斎に気合いの術と彫刻を教える。

・イト
イスケの娘。娘たちの姉御的な存在。
サハチの事を父から聞いて、いつか会えるとサハチとの出会いを待っていた。

・サワ
ヒューガが琉球に行く前、対馬に滞在して仲よくなった後家。
夫は高麗で戦死、9歳の息子と7歳の娘がいる。
サハチとヒューガの食事の面倒を見てくれる。

・サイムンタルー
中尾左衛門太郎。対馬の倭寇の頭領、早田三郎左衛門の次男。
妻の実家の中尾家を継いでいる。

・早田五郎左衛門
サンルーザの弟。
高麗の富山浦(釜山)に住む「津島屋」の主人。妻は高麗人。

・早田次郎左衛門
サイムンタルーの兄。
高麗の富山浦に住む。妻は高麗の商人の娘。
サンルーザと一緒に明国に行っている。

・早田兵衛左衛門
サンルーザの弟。和田浦に住む。
サンルーザと一緒に明国に行っている。


◯高麗の略年表

918年、王建、高麗を建国する。
935年、高麗、新羅を征服する。
960年、中国で宋が建国。
1115年、女真、按出虎水の河畔で、金を建国。
1125年、金、遼(契丹)を滅ぼす。
1127年、金は宋都開封を陥落させて北宋王朝陥落。
1138年、金、南宋の臨安(杭州)紹興、明州(寧波)を陥落させる。
1157年、金、会寧から燕京へ遷都。
1206年、テムジンがモンゴルを統一。
1218年、高麗、モンゴル帝国と同盟する。
1227年、西夏、蒙古に滅ぼされる。
1231年、蒙古(後の元)の侵入が始まる。
1232年、崔氏は国王を連れて都を開城から江華島に移し抵抗する。
1233年、蒙古 金の首都開封を攻略。
1241年、高宗、モンゴルとの講和を請い、貢賦を納めることに同意する。
1258年、武臣の金俊ら 親蒙古を掲げ、崔氏政権を倒し、蒙古へ降伏する。
1271年、蒙古、国号を「大元」と改める。
1274年、高麗軍、元軍と共に日本を攻める。元寇。
1279年、元、南宋を滅ぼす。
1281年、第二次元寇。
1356年、元と断交し、蒙古侵入以前の高麗の領域を回復し独立する。
1358年、倭寇、高麗の角山戊を襲い船300余艘を焼く。
      倭寇のため財政が困窮し、百官の俸禄が支給できなくなる。
1360年、倭寇、高麗の江華島を襲撃する。
1361年、李成桂・鄭世雲が黄州で、紅巾軍に大勝する。
1364年、倭寇、200余艭が高麗を襲撃する。
1368年、明が中国に興り、元を北に追いやる。
1370年、高麗は明へ朝貢して冊封を受けたが、国内では親明派と親元派の抗争が起こる。
1371年、倭寇350艘、礼成江を襲い、兵船40艘を焼く。
1374年、恭愍王、親元派に殺される。
      倭寇350艭が高麗を襲撃。
1375年、済州島で反乱が起こる。倭寇200余艘が済州島を攻める。
1377年、倭寇200余艭が高麗を襲撃する。
1378年、倭寇、京城を攻めるが、李成桂、崔瑩、これを破る。
1379年、倭寇騎馬700、歩兵2000余で高麗の普州を襲撃する。
1380年、倭寇500艘、高麗の鎮浦口に入り、州都に散入する。
1381年、倭寇、高麗の寧海府を焼く。
1382年、賤民が倭寇の名をかたり諸所を荒らす。
1383年、倭寇120艭が高麗を襲撃するが撃退する。
1385年、倭寇150艭が高麗を襲撃するが、李成桂に撃退される。
1388年、明は高麗に対し、元代の旧領を返還するように要求する。
     威化島回軍。李成桂が実権を握る。
1389年、高麗軍、対馬を攻める。
1392年 高麗が滅び、朝鮮となる。


尚巴志伝
ラベル:尚巴志伝 琉球

2024年12月09日

尚巴志伝 あらすじと解説 第一部 17.対馬島

博多をあとにしたサハチ(尚巴志)とヒューガはサンルーザの故郷、対馬の土寄浦に着きます。
サンルーザの五男のシンゴと仲よくなったサハチは、イトという娘と出会います。
イトの父親は船乗りで、琉球に何度も行っていて、サハチの事をイトに話していました。
サハチはイトと仲よくなります。
サハチが対馬に来て半月が過ぎた頃、サンルーザは五十隻もの船を率いて明国へと出掛けて行きます。生きていくために、倭寇として略奪をしに行くのです。
サハチは皆の無事を祈って見送ります。


登場人物

・サハチ(尚巴志)
サミガー大主の孫。父は佐敷按司(サグルー)。

・ヒューガ
三好日向。武芸者。
サハチにとって重要な人物となる。
「陰の流れ 第一部」に智羅天として登場。愛洲移香斎に気合いの術と彫刻を教える。

・サンルーザ
早田三郎左衛門。対馬の武将。倭寇(わこう)の頭領。
サミガー大主と鮫皮の取り引きをしている。

・サイムンタルー
中尾左衛門太郎。対馬の倭寇の頭領、早田三郎左衛門の次男。
妻の実家の中尾家を継いでいる。

・早田丹後守
サンルーザの弟。

・サワ
ヒューガが琉球に行く前、対馬に滞在して仲よくなった後家。
夫は高麗で戦死、9歳の息子と7歳の娘がいる。
サハチとヒューガの食事の面倒を見てくれる。

・シンゴ
早田新五郎。サンルーザの五男。

・トラ
大石寅次郎。サンルーザの配下の息子。

・マツ
中島松太郎。サンルーザの配下の息子。

・ヤス
西山安次郎。サンルーザの配下の息子。

・イト
イスケの娘。娘たちの姉御的な存在。
サハチの事を父から聞いて、いつか会えるとサハチとの出会いを待っていた。

・イスケ
水夫として何度も琉球に行く。
サハチが誕生した時も琉球にいて、サハチの誕生を祝福する。
琉球から帰るとイトが生まれていて、同い年のサハチの成長を琉球から戻る度にイトに話して聞かせる。

・ツタ
土寄浦の娘。シンゴといい仲。

・マユ
土寄浦の娘。トラといい仲。

・シノ
土寄浦の娘。マツといい仲。

・トミ
土寄浦の娘。ヤスといい仲。


尚巴志伝
ラベル:尚巴志伝 琉球

2024年11月13日

尚巴志伝 あらすじと解説 第一部 16.博多

志佐壱岐守(しさいきのかみ)の船に乗って、サハチ(尚巴志)とヒューガは博多に着きました。
サンルーザの船は九州探題の今川了俊に睨まれていて、博多には入れなかったのです。
博多に滞在したサハチは何を見ても驚いていました。
色々な物を売っている市場に驚き、大きなお寺の建物に驚き、出陣して行く兵士たちの立派な鎧や武器に驚き、男装した女たちの華麗な舞にも驚きます。
夜更けに一文字屋の屋敷に盗賊が攻めて来て、サハチとヒューガは盗賊たちと戦います。サハチは初めて人を斬ります。そのあとはもう無我夢中で襲って来る敵と戦い続けます。


登場人物

・サハチ(尚巴志)
サミガー大主の孫。父は佐敷按司(サグルー)。

・ヒューガ
三好日向。武芸者。
サハチにとって重要な人物となる。
「陰の流れ 第一部」に智羅天として登場。愛洲移香斎に気合いの術と彫刻を教える。

・サイムンタルー
中尾左衛門太郎。対馬の倭寇の頭領、早田三郎左衛門の次男。
妻の実家の中尾家を継いでいる。

・志佐壱岐守
壱岐島の倭寇の頭領。松浦党。

・一文字屋孫次郎
坊津の一文字屋次郎左衛門の長男。博多の一文字屋の主人。


◯博多の略年表
1274年、元寇により博多の町は消失する。
1293年、鎮西探題が設置され、大宰府に代わって九州統治の中心となる。
1333年、後醍醐天皇が挙兵すると、菊池武時が鎮西探題北条英時を襲い博多の町を焼き払う。
1336年、九州へ落ち延びた足利尊氏は少弐、島津、大友らと共に菊池氏を破る。
1359年、少弐頼尚が菊池武光に筑後川合戦で大敗する。
1561年、懐良親王、大宰府を征西府とする。
1368年、元国滅ぶ、明建国。家族を連れて博多に逃げてくる元の高官たちが何人もいた。
      陳宗敬、博多に亡命。
1370年、今川了俊が九州探題に任命される。
1371年、懐良親王、「日本国王良懐」の名で明の冊封を受ける。
      九州探題に任じられた今川了俊の弟仲秋の軍勢、呼子港に上陸する。
1372年、太宰府陥落、懐良親王、太宰府から良山に移る。
1374年、懐良親王、良山から肥後菊池に移る。
      懐良親王、遣明船を出す。
1375年、水島の合戦。今川了俊、少弐冬資を殺す。島津伊久、南朝に寝返る。
1376年、懐良親王、遣明船を出す。
1377年、肥前蜷打の戦い。北朝方の大勝に終わり、南朝方の有力武将を多数討ち取る。
      九州探題今川了俊、倭寇が捕えた被慮人を高麗に送還する。
1378年、高麗使が訪れ、今川了俊、捕虜の送還を行なう。
      今川了俊、兵を高麗に派遣して現地の倭寇討滅に協力する。
1379年、今川了俊、捕えた壱岐の海賊20人を甑に入れて明に贈る。
1380年、懐良親王、明の太祖暗殺の計画に同意し、兵を送るが陰謀は露顕し帰還する。
1381年、懐良親王、菊池城を攻め落とされ、金峰山に移る。
1383年3月27日、征西将軍懐良親王没。
      島津伊久、薩摩守護に復帰し、今川了俊に帰順する。
1385年、相良氏が島津と和睦して了俊に背き禰寝氏も南朝方に走る。
1387年、阿蘇山噴火。
      島津氏久が没すると肥後は今川義範・日向は今川貞満がほぼ制圧する。
      相良前頼、球磨から反撃を加えて征西府の危急を救う。
1388年、今川了俊、捕虜送還と引き換えに高麗に大蔵経を要求する。
1390年、今川了俊、良成親王と菊池武朝の宇土・河尻を落とす。
1391年、今川了俊、良成親王と菊池武朝の八代城を落とす。親王らは矢部に逼塞する。
1392年、南北朝の合一。
1395年、今川了俊、九州探題を罷免され、渋川満頼が任命される。


◯倭寇略年表
1274年、元寇。
1281年、元寇。
1350年4月、倭寇100余艘が高麗の順天府を襲い、穀物を奪う。
1351年8月、倭寇130艘が高麗を襲撃する。
1355年4月、倭寇230艘、高麗全羅道の漕船200余艘を略奪。
1357年、高麗の武将崔瑩が2万5600の大軍で済州島の反乱を制圧する。
1358年、この頃より中国大陸に倭寇が出現する。
1361年8月、懐良親王、少弐氏の太宰府を落とし、太宰府を征西府とする。
1363年4月、倭寇213艘が高麗を襲撃。首都開城を脅かす。
1364年3月、倭寇200余艘が高麗の河東、固城を襲撃する。
1364年5月、高麗軍、鎭海県で倭寇3000人を斬る。
1367年、高麗、使者を送り, 室町幕府に倭寇の禁圧を求める。
1368年、元国滅ぶ、明建国。
1371年6月、倭船200艘、明の海晏を襲う。
1371年11月、九州探題に任じられた今川了俊の軍勢、肥前呼子港に上陸する。
1372年5月、倭船200艘、明の温州府、永嘉、楽清の諸県を侵す。
1372年8月、太宰府落城。懐良親王、太宰府から良山に移る。
1374年4月、倭寇350艘が高麗を襲撃。高麗の水軍、大敗して死する者5000人。
1375年、済州島で反乱が起こる。倭寇200余艘が済州島を攻める。
1377年6月、倭寇200余艘が高麗を襲撃。
1377年11月、倭寇130艘が高麗を襲撃。
1377年、この年、高麗は54回の倭寇の襲撃を受ける。
1379年5月、倭寇騎馬700、歩兵2000余で高麗の普州を襲撃。
1380年5月、倭寇100余騎、高麗の結城共州を襲う。
1380年5月、高麗、火砲を搭載できる船を100隻、3000名の水軍部隊が創設する。
1380年8月、倭寇500艘、高麗の鎮浦口に入り、隊を分けて岸に登り州都を攻める。
1380年8月、高麗軍、崔茂宣が開発した大砲で倭船を焼く。
1380年9月、李成桂、雲峰にて倭寇の首領阿只抜都(アキバツ)を倒す。
1383年5月、倭寇120艘が高麗を襲撃するが撃退する。
1385年9月、倭寇150艘が高麗を襲撃するが李成桂、李豆藺に撃退される。
1388年5月、李成桂、軍事クーデターで高麗の実権を掌握。
1389年2月、高麗、対馬を攻撃する。
1392年7月、李成桂、恭譲王を廃位して、高麗王として即位する。
1393年、明の洪武帝の命令により、高麗から朝鮮に国名が変わる。


尚巴志伝
ラベル:尚巴志伝 琉球

2024年10月16日

尚巴志伝 あらすじと解説 第一部 15.壱岐島

坊津(ぼうのつ)で一文字屋と取り引きを済ませ、サハチ(尚巴志)たちは甑島(こしきじま)を通って五島列島の福江島に着きます。
福江島にはサンルーザの弟の早田備前守がいました。
福江島から島伝いに北上して、宇久島から壱岐島に向かいます。
壱岐島にはサンルーザの娘婿の早田藤五郎がいました。
サハチはヒューガと一緒に壱岐島を散策して、昔、察度の配下だったという老人と出会い、若い頃の察度と泰期の話を聞きます。


登場人物

・サハチ(尚巴志)
サミガー大主の孫。父は佐敷按司(サグルー)。

・サンルーザ
早田三郎左衛門。対馬の武将。倭寇(わこう)の頭領。
サミガー大主と鮫皮の取り引きをしている。

・ヒューガ
三好日向。武芸者。
サハチにとって重要な人物となる。
「陰の流れ 第一部」に智羅天として登場。愛洲移香斎に気合いの術と彫刻を教える。

・早田備前守
サンルーザの弟。五島の福江島の拠点を守っている。

・早田藤五郎
サンルーザの娘婿。壱岐島の拠点を守っている。
子供の頃、倭寇にさらわれて対馬に来た高麗人。
頭がよく、見所があったので、サンルーザに育てられる。
通訳として活躍し、戦でも活躍して、サンルーザの娘を妻にもらって早田藤五郎と名乗っている。

・壱岐島の老人
昔、察度の配下として活躍した倭寇。


尚巴志伝
ラベル:尚巴志伝 琉球

2024年08月21日

尚巴志伝 あらすじと解説 第一部 14.ヤマトゥ旅

◇尚巴志伝 あらすじと解説 第一部 14.ヤマトゥ旅

サハチ(尚巴志)が乗ったサンルーザの船は伊平屋島を出帆して、永良部島(沖永良部島)、徳之島、奄美大島、トカラ列島の宝島、中之島、口の島、口之永良部島を通って、薩摩の坊津(ぼうのつ)に着きます。
ヤマトゥの国はサハチが思っていたよりもずっと遠くにありました。途中に島がまったく見えない事もあり、海の広さを改めて感じ、海が荒れた時は、このまま死んでしまうのではないかと恐ろしい思いをします。
坊津にはサンルーザの取り引き相手の『一文字屋』があり、サハチたちはお世話になります。

先代の一文字屋は備前の柄巻師(つかまきし)でしたが、刀の柄に巻く鮫皮が手に入らなくなってしまい、博多までやって来ます。
鮫皮はエイの皮で日本では捕る事ができず、海外から仕入れていました。南北朝の争いが続いて、海外の窓口だった博多も全焼してしまい、博多に住んでいた唐人たちも皆、引き上げてしまいます。
焼け野原の博多をさまよっていた一文字屋が出会ったのが、サンルーザの父親、早田次郎左衛門でした。次郎左衛門は一文字屋の話に乗り、琉球に行く事になります。
伊平屋島で鮫皮作りを始めたのはサンルーザの父親で、サハチの祖父のサミガー大主は鮫皮の作り方を身に付けて、馬天浜に行ったのでした。
琉球の鮫皮を手に入れる事に成功した一文字屋は柄巻師をやめて、鮫皮を扱う商人となり、さらに、明国の商品を扱う商人となって、やがては京都に進出して行きます。


登場人物

・サハチ(尚巴志)
サミガー大主の孫。父は佐敷按司(サグルー)。

・サンルーザ
早田三郎左衛門。対馬の武将。倭寇(わこう)の頭領。
サミガー大主と鮫皮の取り引きをしている。

・ヒューガ
三好日向。武芸者。
サハチにとって重要な人物となる。
「陰の流れ 第一部」に智羅天として登場。愛洲移香斎に気合いの術と彫刻を教える。

・クルシ(黒瀬)
早田三郎左衛門の重臣。

・一文字屋次郎左衛門
備前出身の坊津の商人。


尚巴志伝
ラベル:尚巴志伝 琉球

2024年07月20日

尚巴志伝 あらすじと解説 第一部 13.伊平屋島

サンルーザの船に乗ったサハチとヒューガは今帰仁に寄ってから、伊是名島、伊平屋島へと向かいます。
伊平屋島では大叔母の我喜屋ヌルから曾祖父(与座の若按司)と若き日の祖父(サミガー大主)の話を聞きます。

曾祖父の与座若按司は父親を伯父の島尻大里按司に殺され、伊平屋生まれの家臣に連れられて伊平屋島に逃げて来ます。
父の敵を討とうとしますが、家臣たちには裏切られるし、なかなか討つ事はできません。
やがて、先代の我喜屋ヌルと結ばれ、サミガー大主や我喜屋ヌルが生まれます。
子供たちのために、曾祖父は敵討ちは諦め、自分の素性も子供たちには伝えずに亡くなります。
先代の我喜屋ヌルは亡くなる前に、子供たちを呼んで、父親の素性を話します。しかし、すでに敵である島尻大里按司は亡くなっていました。
サハチは祖父や曾祖父の若い頃の話を聞いて、これから始まるヤマトゥ旅の経験を生かして、精一杯頑張らなくてはならないと思います。


登場人物

・サハチ(尚巴志)
サミガー大主の孫。父は佐敷按司(サグルー)。

・サンルーザ
早田三郎左衛門。対馬の武将。倭寇(わこう)の頭領。
サミガー大主と鮫皮の取り引きをしている。

・ヒューガ
三好日向。武芸者。
サハチにとって重要な人物となる。
「陰の流れ 第一部」に智羅天として登場。愛洲移香斎に気合いの術と彫刻を教える。

・ミヌキチ
刀の研ぎ師。先々代の今帰仁按司に呼ばれてヤマトゥから来る。
先代の今帰仁按司が羽地按司に攻め滅ぼされたあと、刀の研ぎ師を辞めるが、クマヌと出会い、先代の遺児(伊波按司と山田按司)が生きている事を知ると、刀の研ぎ師に復帰する。
妻は先代の今帰仁按司の妹。娘は伊波の若按司の妻。

・ナビーお婆
サハチの大叔母。サミガー大主の妹。伊是名島の仲田大主の妻。
伊是名島で鮫皮作りをしている。

・我喜屋(がんじゃ)ヌル
サハチの大叔母。サミガー大主の妹。

・与座の若按司
サハチの曾祖父。サミガー大主の父。
父親の与座按司が伯父の島尻大里按司に殺され、伊平屋島に逃げて来る。
童名はヤグルーで、ヤグルー大主と呼ばれる。


尚巴志伝
ラベル:尚巴志伝 琉球

2024年06月04日

尚巴志伝 あらすじと解説 第一部 12.恋の病

フジと別れて奥間をあとにしたサハチ(尚巴志)たちは、名護まで戻り、東海岸に出て南下します。
伊波グスクに寄って、マチルギと試合をして、サハチは紙一重の差でマチルギに勝ちました。
伊波から西海岸に出て、読谷山の宇座に行き、宇座按司(泰期)と会います。
宇座按司は広い牧場で馬を育てていて、サハチたちを歓迎してくれました。
宇座按司との出会いはサハチの生き方に大きな影響を与えます。

サハチたちが宇座按司の屋敷に滞在中、浦添から馬に乗って侍女が訪ねて来ます。まるで十数年後のマチルギのようだとサハチは感心しますが、この侍女はナーサです。18年後、サハチはナーサと出会い、この時の事を思い出します。

旅から帰ったサハチは、父親の佐敷按司に旅の話をして、人々を苦しめている戦をなくすには琉球を統一しなければならないと言いいます。
島添大里按司を倒し、山南王も倒し、中山王も、山北王も倒さなければならないと大きな事を言います。
とんでもない事を言い出したサハチに、父親は驚きますが、サハチが生まれた時の事を思い出します。志喜屋の大主は、「この子はただものではない」と言いました。そして、『月代の石』が光ったとも言いました。
父親はサハチの顔をじっと見つめ、サハチならやるかもしれないと思い始めます。

旅から帰って一月が経つと、サハチは父親に大口を叩いた事が恥ずかしくなります。現実問題として、琉球を統一するどころか、島添大里按司を倒す事も難しい事でした。そんな夢のような話よりも、サハチはマチルギに会いたくなります。
サハチは父親の許しを得て、クマヌと一緒に伊波に向かいます。伊波にはヒューガがいて、マチルギの指導をしていました。
サハチはマチルギと試合をして負けます。試合に勝って、マチルギをお嫁に迎えようと考えていたサハチはしょんぼりとして雨を眺めています。そんなサハチにマチルギが声を掛けてきます。サハチは一月後に試合をしようとマチルギと約束します。

今度こそはマチルギに勝とうと剣術の修行に励んでいたサハチは、父親からヤマトゥ(日本)の国に行って来いと言われます。父親も十六歳の時にヤマトゥに行って来たと言います。
サハチはヤマトゥ旅に出る前に、伊波に行ってマチルギと会い、ヤマトゥ旅から帰って来るまで、試合を延期してくれと頼みます。マチルギは、待っていると言いました。


登場人物

・サハチ(尚巴志)
サミガー大主の孫。父は佐敷按司(サグルー)。

・宇座按司
泰期。察度の義弟。
中山王の使者として何度も明国に行っているが、今は引退して、宇座の牧場で馬を育てている。

・ナーサ
島添大里按司が八重瀬グスクを攻め落とす時に、八重瀬按司に贈った絶世の美女。
今は浦添の若按司に嫁いだ島添大里按司の長女の侍女として浦添グスクにいる。
後に尚巴志にとって重要な人物となる。

・尚巴志の父、佐敷按司
サグルー。サミガー大主の長男。後の中山王、思紹(ししょう)。

・クマヌ
ヤマトゥの山伏。佐敷按司の家臣。

・マチルギ
伊波按司の次女。後に尚巴志の妻になる。

・ヒューガ
三好日向。武芸者。
サハチにとって重要な人物となる。
「陰の流れ 第一部」に智羅天として登場。愛洲移香斎に気合いの術と彫刻を教える。


尚巴志伝
ラベル:尚巴志伝 琉球

2024年05月03日

尚巴志伝 あらすじと解説 第一部 11.奥間

サハチ(尚巴志)たちは今帰仁グスクから羽地に戻り、北上して奥間という村に着きます。
奥間村の長老に歓迎されたサハチたちは半月余りを奥間で暮らします。

奥間村はヤマトゥ(日本)から渡ってきた鍛冶屋集団が住み着いた村で、琉球中の鍛冶屋を仕切っていました。
鍛冶屋だけでなく、炭焼き、木地屋、猟師、杣人、研ぎ師などの職人たちも奥間とつながっていました。
クマヌのお陰で、奥間村とつながりを持ったサハチは、奥間村の力を借りて、琉球統一への道を進んで行きます。

奥間村には、遠い所から村を訪ねて来た男に、一夜妻を与えて歓迎する習慣があり、サハチたちも一夜妻の歓迎を受けます。
サハチの一夜妻になったのは、サハチと同い年の研ぎ師の娘のフジでした。フジは可愛い娘で、サハチは夢中になってしまいます。


登場人物

・サハチ(尚巴志)
サミガー大主の孫。父は佐敷按司(サグルー)。

・サイムンタルー
中尾左衛門太郎。対馬の倭寇の頭領、早田三郎左衛門の次男。
妻の実家の中尾家を継いでいる。

・ヒューガ
三好日向。武芸者。
サハチにとって重要な人物となる。
「陰の流れ 第一部」に智羅天として登場。愛洲移香斎に気合いの術と彫刻を教える。

・クマヌ
ヤマトゥの山伏。佐敷按司の家臣。

・奥間の長老
奥間大主。1375年、奥間に来たクマヌを歓迎する。

・奥間ヌル
長老の姉。

・ヤザイム
鍛冶屋の親方。長老の長男。

・アサ
クマヌの一夜妻。

・シホ
ヒューガの一夜妻。のちに、ヒューガの娘、ユリを産む。

・チヨ
サイムンタルーの一夜妻。

・フジ
サハチの一夜妻。研ぎ師の娘。のちに、サハチの息子、サタルーを産む。


尚巴志伝
ラベル:尚巴志伝 琉球

2024年04月08日

尚巴志伝 あらすじと解説 第一部 10.今帰仁グスク

伊波グスクをあとにしたサハチ(尚巴志)たちは西側の海岸を北上して名護に行き、運天港に行き、今帰仁へ行きます。
高い石垣に囲まれた今帰仁グスクを見たサハチは驚きます。
今帰仁では研ぎ師のミヌキチの家にお世話になります。

今帰仁グスクは山北王の帕尼芝(はにじ)の居城。
先々代の今帰仁按司の娘婿の羽地按司は、先々代が亡くなったあと、義兄の今帰仁按司を攻め滅ぼして、今帰仁按司となり、1383年、明国に朝貢して、帕尼芝の名で山北王に封じられる。


登場人物

・サハチ(尚巴志)
サミガー大主の孫。父は佐敷按司(サグルー)。

・サイムンタルー
中尾左衛門太郎。対馬の倭寇の頭領、早田三郎左衛門の次男。
妻の実家の中尾家を継いでいる。

・ヒューガ
三好日向。武芸者。
サハチにとって重要な人物となる。
「陰の流れ 第一部」に智羅天として登場。愛洲移香斎に気合いの術と彫刻を教える。

・クマヌ
ヤマトゥの山伏。佐敷按司の家臣。

・ミヌキチ
刀の研ぎ師。先々代の今帰仁按司に呼ばれてヤマトゥから来る。
先代の今帰仁按司が羽地按司に攻め滅ぼされたあと、刀の研ぎ師を辞めるが、クマヌと出会い、先代の遺児(伊波按司と山田按司)が生きている事を知ると、刀の研ぎ師に復帰する。
妻は先代の今帰仁按司の妹。娘は伊波の若按司の妻。


◯硫黄に関する略年表。

900年頃、唐で火薬が発明される。
960年、日宋貿易で硫黄が輸出される。
1085年、宋から硫黄を大量に求める商人が太宰府に来る。
1145年、温州に漂流した船に硫黄が積んであった。
1271年、元が建国。
1274年、蒙古襲来。蒙古軍、火薬を使用する。
1281年、蒙古襲来。蒙古軍、火薬を使用する。
1351年、大陸で紅巾の乱が起こる。
1368年、明が建国。
1372年、察度、明と朝貢貿易を始め、硫黄を献上する。


尚巴志伝
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